ファンの声に後押しされて制作されたものの、蓋を開けてみれば散々な評価となってしまったファイナルファンタジー10-2。
FF10-2はやりこみ前提のゲームですが、結局1周しただけで投げ出してしまいちゃんとストーリーを理解していない人も多いと思うので、今更ですがFF10-2のあらすじを振りかえりながら再評価していきます。
FF10のストーリー解説の方にも目を通してから読んでいただくとより分かりやすいと思います。
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CHARACTER DEISGN:TETSUYA NOMURA
FF10-2の世界観
物語の舞台は、ユウナ一行がシンを消滅させてから2年後のスピラ。新エボン党と青年同盟という新たな勢力がスフィアハントで競い合いながら、次世代の主導権を争っている状況が表の世界での動きとなります。
真実運動とスフィアハンター
シンがいなくなったスピラでは、それまでエボン寺院によって隠蔽、改ざんされていた本当の歴史を取り戻そうという大きな波が起こっており、これを真実運動と呼びます。提唱者は新エボン党の創設者トレマ。
歴史の手がかりとなる映像スフィアの発見、解析が主な活動内容であり、こうした活動を行う人やグループはスフィアハンターと称されます。
新エボン党
新エボン党は真実運動の提唱者でもあるトレマが設立したグループ(現実世界の政党に近い)であり、かつてエボン寺院の僧官や僧兵だった人物や保守的な老人が主な構成員となっています。
創設者のトレマは皆が集めたスフィアと共に消息不明となっており、ゲーム中での党首はバラライ。
青年同盟
青年同盟は、スフィアを持って消えたトレマ(=新エボン党)に不信感を抱いた元討伐隊員ヌージが設立したグループ。
元討伐隊員を中心に、かつてのエボン寺院に強い抵抗感をもつ若者が主な構成員となっています。
ストーリー序盤では新エボン党、青年同盟のどちらかに肩入れすることになりますが、最終的な展開では青年同盟に味方した方が収まりの良い結果となります。
マキナ派
マキナ派は、ジョゼ寺院に本拠地を置き、エボン寺院の統治時代には禁忌とされていた機械の研究開発を行うアルベド族のグループ。リーダーはアルベド族の青年ギップル。
登場人物で振り返るFF10-2のあらすじ
1000年前の人物
FF10-2で遭遇する数々の出来事は、前作FF10と同様1000年前に起こったベベルとザナルカンドの機械戦争が発端となっています。
レン
1000年前のザナルカンドの人気歌手。
レンはアーティストであると同時に優れた召喚士でもあったため、ベベルとの戦争に召集されることになります。レンの恋人だったシューインは敵国ベベルの機械兵器「ヴェグナガン」を用いて戦争を終結させレンを救おうと暴走しますが、直前でレン本人がシューインを制止。その場でベベルの兵士に射殺されてしまいます。
悲劇の死を迎えた後もレンの想いは歌姫のドレスフィアに宿っており、ストーリー中ではユウナを通じてたびたび現世に発現します。
ストーリーLV2の序盤で流れるティーダとユウナが逃亡している夢(予告詐欺)は、シューインとレンの最後のシーンにユウナの記憶が混ざったもの。
FF10-2の山場となる雷平原ライブで歌われる「1000の言葉」は、レンの想いがユウナを通じて溢れた象徴的なシーン。ユウナの喋りと倖田來未の歌声の違いに違和感があるのは事実ですが、レンが宿ったドレスフィアの力で歌っていると解釈すれば、まあ納得できなくもないかなと思います。
一方、色んな意味でプレイヤーの度肝を抜いた、FF10-2 OPでルブラン扮する偽ユウナが歌う「Real Emotion」はレンの持ち歌なのかルブランのオリジナルなのかは不明。
シューイン
1000年前のザナルカンドでレンの恋人だった青年。映像スフィアごしに見ると、ユウナ達が本人ではないかと勘違いするくらいにティーダそっくりですが全くの別人。
1000年前、敵国ベベルの機械兵器「ヴェグナガン」で戦争を集結させ、レンを戦争の惨禍から救おうと暴走しますが、レンに制止されその場で命を落としてしまいます。
その後、レンを救えなかったという後悔と悲劇を引き起こしたスピラという世界への怨念といった負の感情のみが幻光虫と結びついたことで「影」としてスピラに留まることになり、このシューインの「影」にアカギの4人が触れたことがFF10-2の物語の引き金となります。
シューインの「影」に取り憑かれた人間は深い絶望に苛まれ、正気を失いあらゆる人間に対して敵意を向けるようになります。ストーリーの核心エピソードでは、リュックやパインですらシューインの「影」には抗えないシーンがあります。
また眠りについた祈り子の想いにすら取り憑き召喚獣を魔物として具現化させるなど、ちょっと設定を盛りすぎた感も…。
シューインはヌージやバラライに取り憑き、ヴェグナガンを目覚めさせスピラを滅ぼそうと暗躍しますが、最後は歌姫のドレスフィアに宿ったレンの想いがユウナによって届けられ、正気を取り戻してレンと一緒に異界へと旅立ちます。
ベベルで亡くなったのになぜキノコ岩街道の洞窟に残留思念がいたのか、またストーリー終盤で本体?は異界にいたのにキノコ岩街道にも「影」が残っているのはなぜか?、本体が成仏した後も封印の洞窟にはまだ「影」は残っているのだろうか?、など残された疑問もいくつか。
ヴェグナガン
FF10-2のキーワードとなる機械兵器「ヴェグナガン」。
1000年前の機械戦争時代にベベルが開発したものですが、スピラを滅ぼしかねない強大な力を持ちながら、制御不能で敵味方の区別がつかないという欠陥をもつ「壮大な失敗作」。
これは敵を察知するセンサーが敏感すぎることに起因しており、少しでも敵意を感知すると自動で起動し反撃したり逃亡したりしてしまうため破壊処分することも出来ず、1000年間アンダーベベルで秘密裏に安置されることになります。
元アカギ隊
アカギ隊
アカギ隊は、かつてエボンの四老師だったキノックが秘密裏に主導した対シンのための特殊部隊で、各地の討伐隊を指導するエリート兵士という位置づけで選抜されました。
しかしその実態はキノック直属の私設兵団であり、若くして台頭してきたシーモアとの権力闘争に優位に立つための施策でもありました。
2年前、FF10の「ミヘン・セッション」の直前に選抜試験が行われていましたが、候補者がシューインの「影」に触れたことで同士討ちとなり壊滅、生還したヌージ、バラライ、ギップル、記録係のパインも証拠隠滅のため寺院(キノック)から命を狙われるようになります。
その後、アカギの3人はシューインの記憶の中で見た「ヴェグナガン」に対抗するべく、それぞれ活動を開始。FF10-2の主人公はユウナですが、物語としてはこの元アカギ隊の行動がスピラの世界の本筋にあたります。
ヌージ
青年同盟の創設者兼党首。
死をも恐れない勇猛果敢な性格で討伐隊の中でも英雄的存在だったといわれ、FF10から10-2に至るまで一切の隙をみせないあのルチル隊長ですら心酔しているほどのカリスマ。
アカギ隊の選抜試験時にシューインの「影」に取り憑かれ、エボン寺院からの逃避行中にバラライ、ギップル、パインに向けて発砲。4人の仲違いのきっかけをつくってしまいます。
以降、ヌージはシューインの「影」を押さえつけながら青年同盟を旗揚げしスフィアハンターとしてヴェグナガンの調査を続ける過程で、ヴェグナガンがアンダーベベルに安置されていることを突き止めます(この証拠になったのがルブランがカモメ団から盗んだ割れたスフィア)。
ストーリーLV2ではヴェグナガンを破壊しようと単身アンダーベベルに乗り込むものの、ヌージの敵意に反応したヴェグナガンは異界に逃走。この時、異界と繋がっている各地の祈り子の部屋に穴が空き、シューインの影に触れた祈り子の想いが魔物と一体化して召喚獣として具現化します。
ヌージを宿主にしたままではヴェグナガンに接近できないと判断したシューインの「影」は、ストーリーLV3の密会でバラライへと憑依することになります。
バラライ
新エボン党の若き党首。
物腰穏やかな性格で、エボン寺院統治下でもアルベド族のギップルに偏見なく接するなどかなりの人格者。
一方で、逃避行中ヌージに発砲され皆と離ればなれになった後、キノックとの確執をダシにシーモアに寺院からの保護を依頼したり、新エボン党内でクーデターを起こし議長の座を奪い取るなど、したたかでやり手な一面も。
詳細な時系列は明らかになっていませんが、青年同盟が設立された際、ヌージがヴェグナガンを利用しようとしているのでは、と勘ぐって新エボン党に入党したと考えるのが自然でしょうか。
バラライはベベル内部で「ヴェグナガン」のことを嗅ぎ回り、安置されている場所や欠陥仕様にいたるまで詳細な情報を入手。ストーリーLv2ではヴェグナガンに近づこうとしたユウナ一行に立ちふさがります。
ヴェグナガンに対しては刺激せずに放置するべきという立場をとっており敵意を抱いていないことから、ストーリー終盤ではヴェグナガンに近づくための「器」としてシューインに利用されてしまいます。
ギップル
ジョゼを拠点に活動するマキナ派のリーダー。
マキナ派はエボン寺院統治下では禁止されていた機械の研究開発を行いスピラの発展に貢献するのが目的の集団ですが、その裏には機械を通じてヴェグナガンの脅威に対抗しようというギップルの意思が隠れています。
他の2人と比べると、シューインに乗っ取られた経験がなく、また政治面での権力者ではないということもあり影がうすく浮き気味。EDでの演説シーンでも1人場違い感が…
実は、FF10のビーカネルでユウナ一行が離散した際に、ギップルは合流前のアーロンと遭遇しています。このシーンはミヘン街道のリン探偵でリンを犯人にすると見ることが出きます(ギップルのスフィア)が、エピソードコンプリートにならないこともありFF10-2の中でも殊更見たことある人が少ない場面の一つといえるでしょう。
カモメ団
カモメ団はアニキ、リュックの兄妹を中心としたスフィアハンターグループ。少数精鋭ですが優れた人材と飛空艇による機動力が大きな強み。
ティーダの手がかりを求めて各地を飛び回る、というのがプレイヤー視点でみたFF10-2のストーリーの柱になります。
ユウナ
FF10シリーズ全体の主人公といえる存在。
シンを倒した後ビサイドに戻り、途切れずに訪れる面会者の相談にのるだけの日々を送っていましたが、リュックからティーダに似た人物(シューイン)が写ったスフィアを見せられ、ティーダの手がかりを探すためもう一度旅にでることを決意。スフィアハンター「カモメ団」の一員となって世界を飛び回ることに。
スフィアハントの過程でヴェグナガン、シューイン、レンの存在を知り、最後はレンの想いをシューインに届けることでシューインを成仏させヴェグナガンの破壊にも成功、再びスピラを救った英雄となります。
服装は「永遠のナギ節」のラストでリュックが持ってきたもので、髪型はティーダを意識したものに変化。口調はリュックやティーダの影響を感じさせるものになっており、色々と議論の的。
スピラ全体の視点で見ると、FF10-2はシューインと元アカギ隊によるヴェグナガンを巡る攻防がメインの物語です。ユウナ(カモメ団)は本筋からは少し外れた立ち位置にいますが、
- 過去にとらわれ身動きがとれなくなっていたユウナが、「キミがうつったスフィア」をきっかけに一歩を踏み出す
- 服装や口調など目に見える範囲では無理に変わろうとしているけれど、頼られると断れない使命感に満ちた性格は変わっていない
というのがユウナ側から見たFF10-2の主題になっています。
ちなみにEDでは「どこかの空で元気にしている」、という伝言を残しますが、ティーダの復活如何にかかわらず、FF10-2のストーリー後ユウナはカモメ団を退団し再びビサイドに戻って暮らしています。
ラストミッションでは、ティーダとのおノロケを披露するシーンもあります。ティーダ復活EDを見ていない場合はワッカとルールーの子供であるイナミの話になりますが、ラストミッションをプレイするような層でティーダEDを見ていない人はいないはずなので、ある意味こちらのほうがレアなシーンといえるでしょう。
リュック
前作FF10から唯一メインキャラクターとして登場。ユウナを再び旅に連れ出した張本人。
FF10ではユウナ一行のニギヤカ担当を自称しメンバーの潤滑油的な存在だった一方、アルベド族であるが故に敬虔なエボン信者だったワッカと衝突したり、ホームを襲撃され多くの仲間を失ったりと影のあるキャラでしたが、今作では本来の明るさを発揮。
ユウナと共にシンと戦った伝説のガードでもありますが、前作のアーロンと違い民衆から全く尊敬の念を抱かれている描写がないのが不遇。
ラストミッションではヴェグナガン討伐後もカモメ団の一員として各地を飛び回り仕事に奔走していますが、それは自身の将来に対する不安をごまかすためでもあり、ビサイドでのんびり生活を送るユウナと衝突する場面も。
パイン
FF10-2から加わったメインキャラクター。
2年前はアカギ隊選抜試験の記録係を努めており、パインが担当したのがヌージ、バラライ、ギップルのグループ。キノコ岩街道でシューインの「影」による同士討ち事故に巻き込まれ、生還した後もシューインに取り憑かれたヌージに打たれてしまいます。
その後、ユウナが加入する少し前に素性を明かさないままカモメ団に加入。得体の知れない人物を迎え入れるカモメ団の採用基準が気になるところ(後にユウナのようなVIPが加わることを考えればなおさら)。
結果的に2年前の事件の原因がシューインの「影」であることを突き止めヴェグナガンの破壊に成功した、という点を鑑みると、FF10-2のもう1人の主人公といえる存在。
ストーリー最終盤で飛空艇を操縦したいという夢が語られますが、ラストミッションのOPで無事実現。またFF10-2のストーリー後は、それまでの出来事を記録した本を執筆中。
シンラ
カモメ団の一員でアルベド族の天才少年。
ストーリー終盤では「異界の膨大なエネルギー(=高濃度の幻光虫)」に目をつけ、FF10-2の物語終了後はアルベド族の実業家であるリンと組んで実用化に向けて研究を始めます。
それ以後長年の時を経て、異界のエネルギーは魔晄エネルギーとして実用化されFF7の神羅(シンラ)カンパニーへとつながる、という裏設定があります。まあアルティマニアΩのスタッフインタビューの一節なので、本当にFF10とFF7が繋がっているかどうかは原作者次第、という他ありませんが。
その他の重要人物
ルブラン
グアド族が去った後のグアドサラムに拠点をおくスフィアハンター「ルブラン一味」の頭。
ルブラン一味はスピラ中に部下を派遣する圧倒的な組織力が強み。頭であるルブランは口が悪く人使いも荒いものの、訳ありの人物を部下として迎え入れるなど懐の深い人物でもあり、部下からの信頼は意外にも厚い。
ルブランはヌージに片思い中であり、彼の役に立つためにスフィアハントを行っています。実際にルブランがカモメ団から盗んだ割れたスフィアが直接の証拠となり、ヌージはヴェグナガンがアンダーベベルに保管されていることを確信します(ストーリーLv2)。
評判の芳しくないFF10-2のオープニングですが、実際にライブを開催したのはユウナではなく歌姫のドレスフィアとリザルトプレートを盗んだルブラン(このとき何故容姿まで似せることができたのかは謎)。
よく見ると偽ユウナは両目とも瞳の色が青くなっており、本物のユウナ(右目がアルベド族の特徴である緑色)ではないことが分かるようになっています。
ルブラン一味は序盤でカモメ団と対立するものの、結局最終決戦までユウナたちと共闘することになります。
メイチェン
FF10から引き続き登場した物知り爺さん。
前作ではエボン寺院の中枢の人物以外知り得ない情報をも熟知している謎の人物でしたが、今作ではその理由が明らかに。
実は1000年前の機械戦争時代より死人としてスピラに存在し続けている歴史の生き(?)証人。後付け設定ではあるものの、メイチェンが自分が死人であることを思い出す過程は綺麗に伏線が回収されており感動もの。
レンと握手したことを感慨深げにかたる若き日のメイチェン(スカのスフィア)。
キノコ岩街道で1000年の時をこえてレン(ユウナ)と再び握手。
ザナルカンド遺跡で成仏。
トレマ
真実運動の発起人かつ新エボン党の創設者。
ストーリー中ではしばらく名前しかでてこない謎の人物ですが、その正体はFF10で多くのやりこみプレイヤーを楽しませてくれた「訓練所の親父」その人。
幻光虫に干渉し魔物を生み出したり操ったりできる特殊能力の持ち主。新エボン党に集まった映像スフィアを持ってベベルの迷宮の最下層に身を隠しています。
実際に戦ってみるとあらゆるステータスが高い難敵。訓練所の強力モンスターを生み出すことができるのも納得の強さを誇ります(訓練所のモンスターの圧倒的な強さはあくまでもゲームの仕様であり、トレマ自身もシンを倒せるほどの人物ではないと思いますが…)。
トレマは「未来へ目を向けるためには過去を捨てなければならない」、という思想の持ち主であり、民衆が集めたスフィアをすべて破壊してしまいます。「過去を受け入れつつ未来へと歩み始めた」FF10-2のユウナとの対比が非常に印象深い存在で、ユウナ視点のストーリーでFF10-2を捉えると一番乗り越えなければいけない存在はこのトレマといえるかもしれません。
「つながり」を意識するとFF10-2は面白い
物語中でもユウナがたびたび口にする「つながり」。キャラ同士のつながり、前作FF10とのつながりを意識すると、FF10-2のストーリーをより深く楽しむことが出来ます。
ウノーとサノー
ルブランの側近であるウノーとサノーですが、ストーリーLv4の通信スフィアで2年前はエボン寺院の元で働いていたことが語られます。
大惨事となったアカギ隊選抜試験の事後処理を任されたのもこの二人であり、アカギのスフィア(アカギ報告1)の声をよく聞くと確かにこの二人であることがわかります。
ベクレムとチャップ
ウノーやサノー同様FF10-2の新キャラである青年同盟の教官ベクレム。第一印象は最悪な彼ですが、実は討伐隊時代はワッカの弟であるチャップの戦友だったことが発覚。
またベクレムがくれるスフィアには、チャップが戦場へ旅立つ前に祈っていかなかったときのシーン(FF10の序盤で語られる)の真実が写っています。
イナミ
ワッカとルールーの子供であるイナミ。「イナミ」をアルベド語と捉えて日本語に変換すると「ミライ」。
2年前はエボンの教えに一切の疑いを持たず偏見だけでアルベド族を軽蔑していたワッカですが、自身の子供にはアルベド語の名前を授けることになります。
エピソードコンプリートの後、飛空艇でリュックに話しかけるとイナミという名前についてとても喜んでいる様子が観察できます。
アーロンとトーブリ
前作FF10では特に目立った活躍のなかったペルペル族ですが、10-2ではイベントプロモーターのトーブリがストーリーLv4で大きな役割を果たします。
高い声、早口、倒置法を多用する独特の喋り方をするトーブリですが、声をあてているのはアーロンと同じ石川英郎さんです。声優ってすごい。
歌でスピラを1つに
2年後のスピラの実質的リーダーであったヌージ、バラライ、ギップルがヴェグナガンを追いかけて異界へ行ってしまった後(ストーリーLv3〜4)、再びスピラの対立は激化し混乱をきわめます。
この状況を打破すべく開催されるのが、ストーリーLv4の雷平原コンサート。展開的には少々唐突な感じもありますが、演出としては前作FF10でスピラ中が祈りの歌を歌って1つになりシンと戦ったシーンに重なります。
このライブの後青年同盟と新エボン党の対立は沈静化し、ラストミッションではどちらのグループも解散に向かっていることが明かされます。
1000の言葉の歌詞
外部Link:1000の言葉(倖田來未)の歌詞 – J-Lylic.net
雷平原で歌われる「1000の言葉」。これは元々レンのシューインへの想いを綴った歌であり、歌姫のドレスフィアを通じてユウナが披露することになります。
歌詞を読んでもらえればわかりますが、そっくりそのままFF10の終盤でティーダを想うユウナの心情に重なります。
ティーダの噂
ストーリーLv3でルブラン一味のアジトを訪れた際、「2年前、大召喚士ユウナの旅にはザナルカンドから来たガード(=ティーダ)が同行していた」という噂が流れていた、というエピソードがメイチェンから語られます。
このイベントは任意ですがティーダEDのフラグの1つにもなっています。後付けの設定ではあるものの、情景が容易に想像できる嬉しい一コマ。
指笛の約束
同じくストーリーLv3の最後で、異界から戻るすべがなく立ち止まってしまうユウナを導いてくれるのがティーダの指笛。
これはティーダとユウナがルカで交わした約束の再現になっています。
ティーダ「もしはぐれたら それで合図な そしたら オレすぐに飛んでくからさ」
もう1つ、ティーダEDの条件となる最後の指笛のシーンも異界での隠しコマンド入力が必要になります。この理由は、異界にはいなくなった人の想いが集まるという設定を理解しているFF10プレイヤーであれば、ティーダのことを思いだして何かアクションを起こしてくれるのでは?、というスタッフの図らいがあります。
ビサイドの砂浜
ティーダEDは、前作のラスト ティーダが水の中で目覚め泳ぎ始める意味深な場面から綺麗に繋がり、FF10の旅の真のスタート地点といえるあのビサイドの海にティーダが戻ってきます。
FF10の幕開けとFF10-2のラストが旅の原点であり二人が出会った場所でもあるビサイドで重なる、というのはなんとも感慨深いものがあります。
この後、ラストミッションではユウナはカモメ団を退団しており、再びビサイドで暮らすことになります(ティーダが復活していない場合でも)。
ザナルカンドにて
FF10-2の100%EDでは、再会ムービーの後にザナルカンド遺跡でティーダとユウナが語り合うシーンが見られます。
このシーンはユウナが丘の上で遠くを見つめているシーンで終わりますが、これは言うまでもなくFF10のオープニングで回想をはじめるティーダとの対比になっています。
FF10-2のユウナは「変わりすぎ」なのか?
変わろうとしているけど根本は変わっていない
多くの人が違和感を持ったであろうユウナの変わり具合ですが、上述のとおり服装については「永遠のナギ節」でリュックが持ってきたものですし、口調についてもリュックからはっきりとツッコまれるシーンがあり、無理して変わろうとしている、ということを示唆するシーンはいくつもあります。
また飛空艇で各地を巡った時のユウナの独白については声のトーンが前作FF10の時に戻るなど、細かい演出がなされています。
プレイヤー側に上手く伝わっているかどうかは別として、「服装や口調など表面上は無理して変わろうとしているけれど、頼られると断れない使命感に満ちた根本的な性格は変わっていない」というのがスタッフ側が表現したかったFF10-2のユウナであるとアルティマニアΩでも語られています。
付き合いの長いルールーからの評価もこの通り。
召喚士になる前はもっと明るかった説
前作FF10の幻光河では、ユウナがキマリとビサイドへ引っ越す時のエピソードを聞くことができます。
その内容は、幼いユウナが周りの心配を他所にシパーフの上から何度も飛び降りて遊んでいた、というもの。こういったエピソードを鑑みると、ユウナも召喚士として使命を負うまではもっと明るいお転婆な性格だったのでは?、という推測もできます。
年齢を考えれば特に不自然でもない説
FF10の時点でユウナは17歳、2年後のスピラが舞台のFF10-2では19歳になっています。現実世界でいえば、ちょうど女子高生から社会人や学生へと成長する年頃です。
高校まですっぴんのスポ根少女だった女の子が女子大生になってブランドバッグを引っさげた読モになっている、といったような事例は現実世界でもわりとよくある話なので、17歳から19歳という年齢の変化を考えれば、FF10-2のユウナの変わり様も不思議ではない、という捉え方もあります。
FF10-2の良いところ
大きな破綻のないストーリー
FF10-2はプレイヤーの声にこたえて生まれた完全なる後付け設定の作品であることはほぼ間違いありません。その割には、
- シンがいなくなった後の政治対立による混乱
- 祈り子がいなくなったせいで環境に変化が訪れ新しい遺跡群が見つかる
- FF10では深く探索できなかったエボンの総本山ベベルで機械戦争時代の凶悪兵器が発見される
など、さほど無理矢理感のない世界観の設定やストーリー展開はよく出来ていると思います。
細部まで作り込まれた分岐システム
FF10-2ではキャラクターや世界観の設定、マップなどゲーム中の大部分が前作FF10から流用されているため、その分浮いた時間がゲーム作りの方にすべて注ぎ込まれています。
ちょっとしたフラグで変化する分岐の多彩さは、よくぞここまで作りこんだなあという感嘆の声しかあがりません。
伝統のATB+ジョブシステムの完成形
バトルシステムに関しては、FF10-2で唯一高評価されている点でしょうか。戦闘中のジョブチェンジ、リザルトプレートのゲート通過によるアビリティ付加、タイミングを合わせると発生するチェインなど、まさしく当時のFFのバトルシステムの完成形であることは疑いの余地がありません。
ラスボスであるヴェグナガンの弱さは拍子抜けするものの、ベベルの迷宮のチャクやトレマ、クリーチャークリエイトなど、レベルを上げて物理で殴るだけでは勝てない難易度設定も◯。
キューソネコカミやきぐるみ士、サイキッカーのような救済システムがある点も見逃せません。
FF10-2はなぜ失敗したのか?
キャラゲー的な演出
ユ・リ・パや悪名高きガガゼトの温泉シーンなど、前作とは打って変わって全体的に軽いノリの演出面に抵抗感を覚えた人は多いはず。家族が見ているリビングで堂々とプレイできるゲームではないのは間違いありません。
「シンの恐怖から開放されたスピラ」という設定を考えれば決して悪くはないと思うのですが、制作スタッフ側とプレイヤー側の間に大きな認識のズレがあった点といえるでしょう。
導入である「永遠のナギ節」を軽視しすぎた
「永遠のナギ節」は、FF10から2年後、ビサイドに閉じこもっているユウナがリュックとともに旅立つまでを描いたショートストーリーで、FF10-2のストーリーの直前のシーンにあたります。
この「永遠のナギ節」は当時FF10のIN版のおまけディスクにしか収録されておらず、10-2をプレイする前に視聴した人はIN版を購入したほんの一握りのマニアのみでした。
ガラリと変わったユウナの服装についてなど本編に繋がる重要な前フリなどもあり、「永遠のナギ節」というワンクッションを置いてから10-2をプレイしたかどうかで第一印象は大分変わったはず。
たった15分程度の内容ですが10-2に繋がる重要なエピソードであり、せめて説明書にでも詳しく内容をのせておくべきだったのではないかと思います。HDリマスターにはちゃんと収録されています。
本筋であるアカギのストーリーのコンプリートが任意
ここまで紹介してきたとおり、FF10-2のストーリーのメインとなるのは、レン、シューイン、ヴェグナガン、そしてアカギの4人の関わり合いです。
アカギの真実を突き止めるためには「アカギのスフィア」をすべて集めなければならないのですが、一度取り逃してしまうとその周では二度と入手できないものも多く、攻略情報なしでのコンプリート難度は高めになっています。
アカギのエピソードを追っていない場合、今まで頑なに沈黙を貫いていたパインがストーリーLv4で突然自分語りを始めたり、
行方不明のはずのヌージ、ギップル、そして何か(シューイン)に取り憑かれたバラライが唐突に異界に登場したり、
本筋のストーリーが断片的で薄っぺらくなってしまい、アカギの4人に全く感情移入できないままゲームが終わってしまいます。大した活躍もしてない新キャラがEDで演説してるのを見てあっけにとられた人は多いはず。
周回プレイを前提に作られているゲームなのであえて限界まで必須イベントを削ぎ落とした結果なのでしょうが、アカギのストーリーを任意にしてしまったことはFF10-2の大きな過ちだったと思います。
せめてアカギのスフィアはストーリーLv5でもすべて入手できるようにしてほしかったところ。
ティーダの復活はおまけ
プレイヤーがFF10の続編に求めていたのは、結局のところユウナとティーダのその後が見たい、という1点に集約されるでしょう。しかしティーダ復活EDは完全な隠し要素となっており本筋ともほとんど関わり合いがなく、クリアボーナス的な側面が強いです。
これには裏話として、元々シナリオチームがティーダの復活はなしの方向で話をつくっていたところ、他の部門の主要スタッフがどうしてもと異議を唱えたため再考の結果ティーダ復活EDがつくられた、という経緯があります。
そのためかティーダが復活できた理由も少々強引であり、嬉しい半面ちょっと腑に落ちない面があるのも事実。
FF10-2をやりこんだ人であれば、ティーダの復活はどちらに転んでもストーリーは丸くおさまると捉えることができます。しかし大多数のプレイヤーからの支持を得るためには、ティーダ復活EDは必須イベントでなくてはならなかったといえるでしょう。
周回前提のマニア向けゲーム
FF10-2はストーリー、システム双方とも周回プレイによるやりこみ前提で設計されており、ゲームソフトは1、2回プレイして終わり、というごく普通の感覚のプレイヤーには馴染みづらいものとなっています。
前作FF10がほとんど取りこぼすことのないシステムだったのとは対照的に、FF10-2は一瞬のタイミングを逃しただけでエピソードコンプができなくなったり、アイテムが手に入らなくなったりとかなりイジワルなつくりです。
周回プレイをしたいと思わせるほどプレイヤーの心を掴めればよかったのですが、上述の通り初見プレイではほぼ確実に重要なエピソードを見逃してしまい、失意のまま二度とプレイすることはなかった、という人が大半だと思います。
周回プレイ前提で作ったのに、殆どの人が1周しただけでやめてしまうようなゲームだったというのが何とも悲しいところ。
BGMがイマイチ
FF10-2はナンバリングFFとしては初めて植松伸夫氏がスタッフから外れた作品であり、それまでのFFとはガラリと曲調が変わりました。
「久遠 ~光と波の記憶~」、「ビサイド」、「ユウナのバラード」、「風紋」など新たな名曲も生まれた一方で、RPGにおいて一番長く聴くことになる戦闘BGMはほとんど記憶に残らないものばかり。加えて、バトル後のファンファーレも廃止されたので余計にFF感が薄れてしまっています。
個人的にVSルブラン一味の戦闘曲は好きなのですが、こちらも序盤でルブラン一味と和解した後は一切聴くことができません。
雑記
FF10-2が圧倒的に不人気な作品であることは疑いの余地がなく、見てられないようなサムいシーンや演出がある迷作なのは事実です。
しかし改めてプレイしてみると、ストーリーや世界観、ゲーム性の両面で緻密に作り込まれた手抜きのない作品でもあり、決してクソゲーの一言で片付けられるゲームでもありません。
今後も評価が覆ることはないでしょうが、あまり深くプレイせずに食わず嫌いになっている人もいるはずなので、FF10の世界が好きなら多少の欠点は目を瞑りつつ改めてプレイしてみるのもいいと思います。
ちなみに10-2 ラストミッションより後を描いた続編もありますが、とても残念な出来なので今の時点では「FF10はラストミッションで無事完結」、と考えておいていいでしょう。