日帰り登山は困難!静岡の秘境 南アルプス 聖岳に登る!【百名山】

静岡県の奥地にある百名山 「聖岳(ひじりだけ)」の夏季登山レポートです。聖岳は標高が3013mもあり登頂にかかる時間が長いだけでなく、登山口までのアプローチも大変な日帰り困難の秘境にある名峰。

南アルプスの圧倒的なスケール感や山頂から眺められる富士山の景色、運が良ければ遭遇できるブロッケン現象など、見どころが満載です。

聖岳の概要

聖岳の登山口

南アルプス 聖岳には、長野県側の便ヶ島(たよりがしま)、または静岡県側の聖岳登山口という2つのコースがあります。

バスの乗車条件などが非常にややこしいため、聖岳登山口へのアプローチは別記事↓で詳しく解説しています。

南アルプスはアプローチが困難なこともあり、せっかく訪れるのであれば数日間歩き続けたい、ということで茶臼岳や赤石岳から縦走する人も多いようです。

この記事で紹介するルート

今回は静岡県側の聖岳登山口から登頂しました。

聖岳 静岡ルートのコースタイム

聖岳登山口から聖平小屋まで約5時間。聖平小屋から山頂まで3時間弱。山頂から聖岳登山口まで下山して6時間。

3000m超えということもあり頂上付近は夏季でも10度以下になることがあるので、防寒着は必須です。

聖岳の日帰り登山は不可能?

聖岳は上記のとおり非常に長い時間を歩く必要があり、さらに登山口までのアプローチでかなりの時間をとられる※ので、どんなに体力のある人でも前乗りの一泊、または下山時の一泊が必要になると考えておいたほうがいいでしょう。

常人は聖平小屋での宿泊、テント泊が必須でピストン登山は無謀です。

長野県側の便ヶ島はマイカーでアプローチができ日帰りがしやすいと言われていましたが、2015年に道が崩落してからは毎年交通規制が敷かれています。

2017年以降は北又渡発電所周辺(便ヶ島まで徒歩2時間ほどの場所)に登山者用の駐車場が確保されることが発表されています。詳しくは↓の記事で紹介しています。

登山の難易度は低い

聖岳はアプローチや登山に時間がかかるものの、登山道自体は歩きやすく危険な鎖場などもないので難易度は低め。長野県側のルートの方が静岡側より険しいようです。

水場が多いことに加え、夏場は山小屋で食料も調達できます。現金さえ持っていけば荷物を減らすことが出来る(もちろん非常食の携帯は必須)ので、初心者の縦走にも最適だと思います。

携帯電話は圏外

南アルプス南部では稜線沿いを除くとほぼ全域で携帯電話が圏外になるので、特にソロ登山の場合は普段以上の注意が必要です。

また長丁場の登山になるということもあり、オフラインでも使えるスマホの登山地図アプリだけでは万が一機器の故障などがあったときに大変なことになるので、紙の地図の携帯も必須になります。

1日目 赤石温泉 白樺荘に前のり

1日目は新東名 新静岡ICから聖岳登山口の麓にある「白樺荘」へ。ICから白樺荘まではすれ違い不可のクネクネ道を2時間ほど走る必要があります。全域で舗装されており待避所も多いですが、かなり運転が疲れます。

白樺荘は山奥にある温泉宿ですが、リニューアルオープンしたこともありとても清潔。前のりする場所としては登山口に近い「椹島ロッヂ」の方が人気がありますが、こちらの白樺荘も要チェックです。

赤石温泉 白樺荘については別記事↓で詳しく紹介しています。

2日目 聖岳登山口から聖平小屋へ

翌日、白樺荘からシャトルバスにのって聖岳登山口へ向かいます。聖岳登山口までは約1時間。

朝7時半頃、ようやく聖岳登山口へ到着。いよいよ登山スタートです。

いきなり急な斜面グイッと登ります。下の方は植林が多め。

30分ほど登ると緩やかなアップダウンが続く歩きやすい道にでます。

最初のチェックポイントである聖沢に到着。水量が多く、轟音が鳴り響いています。

吊橋はかなり揺れるので一人ずつ渡るのがおすすめ。渡っている最中に後ろに乗られるとめちゃくちゃ怖いです。

聖沢を渡ってからが本番。つづら折りの急斜面を延々と登り、一気に標高が上がっていきます。個人的にはこの区間が一番の難所のように感じました。

無事登りきると、聖平小屋までは比較的歩きやすい道が続きます。

少しずつ眺めもよくなってきて、これから目指す稜線が姿を現します。

このルートは水場が多く、持っていく水の量を減らすことができるのも助かります。

遠くには滝のように流れ落ちる水を眺めることもできます。

沢沿いの開けた箇所で小休憩。

山奥ということもあり野生感あふれる植物に囲まれた道はとてもいい雰囲気。

途中で沢を覗くことが出来る展望スポットもあります。

そうこうしている間に聖平小屋に到着。時間に余裕のあったのでこまめに休憩しながらの登山でしたが、ここまでで約5時間ほど。

聖平小屋は水が使い放題、山小屋としては格安の食事、水洗トイレ完備など、非常に快適な環境が整っています。聖平小屋については別記事↓で詳しく紹介しています。

到着したのは昼過ぎでかなり時間を持て余すことになりました。体力に余裕がある人は、聖平小屋で荷物をデポして1日で頂上へ登り、小屋に戻って一泊、翌日下山(日程に余裕があれば大河内岳、茶臼岳方面へ縦走も可)というプランもありでしょう。

聖岳山頂からみえる富士山は朝だと逆光になるため、写真に拘る人はこちらの夕方に山頂到着プランの方がいいかもしれません。聖平小屋に到着した時点での時間や体力と相談して決めるといいでしょう。

また山頂の見晴らしを堪能するには天気が最重要なので、山小屋のスタッフに当日、および翌朝の天気について聞いてみてから判断してもいいと思います。

3日目 聖平小屋から聖岳山頂へ

2時半に起床し、暗闇の中シカの鳴き声を聞きながら少し早めの出発。山小屋の朝食は4時からなので、3時半頃までに出発すると周囲よりひと足早く山頂に到達でき景色を独り占めできます。

早朝はガスまみれで天気が心配でしたが…

日が昇るとともに徐々に青空が見え始めます。

そしてついに浮世絵のような富士山の景色が姿を現します。

食事休憩も含め、3時間ほどで聖岳山頂へ到達。長い道のりでした。

山頂からは巨大な赤石岳と富士山を拝むことができます。

残念ながら雲海までは見ることはできず。

奥聖はパスして下山します。登りは暗くて見えなかったのですが、聖岳の山頂付近は大迫力です。山頂から下って数十分のところから見上げても、よくあんなところまで登ったなあという達成感に包まれます。

山頂手前のチェックポイントである前聖。下の方から見えていたのは聖岳ではなくこちらの前聖らしいです。

こちらが長野県側のルートとの分岐地点。

聖平小屋周辺までいっきに下ります。

出発時は真っ暗で気づきませんでしたが、聖平小屋周辺はキオンやマルダケブキなどお花が綺麗に咲いていました。

山頂付近ではブロッケン現象も見られる

今回は運良くブロッケン現象にも遭遇することができました。

スマホのカメラではうまく写りませんが、登り、下りともにずっと虹色の輪っかが見えていてすれ違う人みんなが手を振っていました。

雑記

下山後は再びバスで白樺荘へ戻り、温泉で疲れを癒やして帰宅。かなりの長丁場になりましたが、それに見合うだけの素晴らしい体験をすることができました。

聖岳は百名山や南アルプスの中でも比較的マイナーであり登山ムックなどでもさほど詳しく扱われていないことが多いですが、訪れる価値のある名峰です。アプローチは大変ですが、ぜひ一度登ってみることをおすすめします。